⑤幼稚園教諭として本気で発達障害に向き合うということ
前回の続きです。
もしよろしければ前回もご覧ください。
ゆうた君の症状の中で、お母さんが一番心配していたこと。
それは言葉の遅れです。
初めて会ったときのゆうた君は、ほとんど言葉を発しませんでした。
言葉の遅れに対して一番有効なことは、とにかくたくさん言葉を聞かせることです。
私たちはそれを言葉のシャワーと呼んでいました。
発達障害にかかわらず、言葉の遅れを心配される親御さんはとても多いです。
その親御さんにも、「とにかくたくさん話をしてください」と言っていました。
子どもから発信がなくても、声をかけて反応が返ってこなくても、とにかく続けてください、と。
言葉の発達は、例えるならば、コップの中の水です。
イメージを絵にしてみました。
子育てを経験されたお母さん。
思い返してみると、この前まではつたないしゃべり方だったのに、急にすごくおしゃべりになった!という経験はありませんか?
コップがいっぱいになるまでは時間がかかりますが、あふれ出すと一気に言葉が出てくるお子さんはとても多いんですよ。
そして知っておいて欲しい一番大事なこと。
それは、コップの大きさ、形は人それぞれということです。
すぐに言葉があふれて、おしゃべりが出来るようになる子もいれば、コップが大きい、入り口が小さくて、なかなか話せない子もいます。
言葉の発達に関しては、本当に個人差が大きいです。
これも気長に、根気強く続けるしかありません。
ゆうた君も時間はかかりましたが、少しずつその効果は出始めました。
もちろんすぐにお母さんに報告です!
すると、お家でも言葉が少しずつ出てくるようになったと話してくれました。
ちょっとずつ前に進んでいる。
それが実感でき、2人で喜びに浸りました。
ですが、まだ文章を話すことが出来ないゆうた君。
今は単語をつなげて文をつなげています。
「せんせい、トイレ」
「こうえん、いった」
「かぶとむし、とった」
という感じです。これが文章らしくなるには、助詞をうまく使えないといけません。
言葉の遅れがある子はここでつまずくことが多いです。
「せんせい、トイレにいきたい」
「こうえんに、いった」
「かぶとむしを、とった」
いつかゆうた君からこんな言葉たちが聞けるのを心待ちにしながら、日々言葉のシャワーを続けるのでした。
そして、私は幼稚園生活で、これ以上無いすばらしい経験をすることになります。
※これはあくまで私の体験です。全ての発達障害のお子さんにあてはまるものではありません。そのご理解の上で読んでいただけると幸いです。