⑧出産したら母になれると思ってました ~出産~
前回の続きです。
陣痛が始まり12時間、事態は全く動く気配はなく……
出産とご対面
隣の処置室から他の赤ちゃんの産声が聞こえてきました。
相変わらず放置が続き、さすがの夫も少しソワソワしていました。
私はというと、痛みと、それを我慢して力が入るのを繰り返すことで気力を体力もすり減り、軽い貧血状態に。
意識がもうろうとして、気を抜けば遠くに行ってしまいそうな感覚に陥っていました。
(このまま続いたら、もう絶えられない……)
(痛い、でもいきんじゃいけないし…でも痛い…)
(いや、でもこんな我慢してても誰も来ないし、なんなんこの状況、きつい!!!)
もう嫌だぁぁぁぁ!!!
言うことなんか聞かないんだぁぁぁ!!!
急に今の状況に怒りがこみ上げてきた私は、先生の言いつけを完全に無視して、痛みに逆らうことなく思いのままいきんでしまいました。
(マネはしないでくださいね!)
その瞬間
夫にまで聞こえる大きな音で、何かが破裂する音がしました。
「あれ?何だ今の」
すると、生暖かい感触が足に伝わってきました。
は、は
破水してるううううううううう!!!
急いで夫に先生を呼んでもらい確認してみると、
「あ、破水してるね、これでずいぶん状況進むよ~準備するわね」
と、急に慌ただしくなってきました。
そして破水した途端、痛みの種類がガラッと変わり、いよいよ赤ちゃんがおりてくる感覚がありました。
そこからは力を入れて、抜いて、入れて、抜いて…
いよいよ佳境にさしかかっていました。
その様子を見て慌てているかと思いきや、夫は目をキラキラさせながら
「すごい!命が誕生する瞬間や!!!!」
と興奮気味です。
隣で赤ちゃんの出てくる様子を事細かに実況する夫。
吠える私。
それを見て吹き出す先生。
なんやこのカオスな状況は。
※注:出産中です
でもおかげで割とリラックス出来、お産は順調に進み、ついに………
元気な産声があがりました。
ちいさなちいさな体の娘。
この子が私のお腹の中にいたあの子なんだ…
やっと会えたんだね…
生まれてきてくれて、ありがとう…
とはもちろん思っていたのですが、現実はこう。
とにかく終わったことが嬉しすぎてガッツポーズしたのを覚えています。
夫はそんな私よりもちゃんと感動してくれてました。
出産にかかった時間は約18時間。
これは初産ではとても優秀な安産だったようです。
え?18時間かかって、これが普通なの?
世界中のお母さん、すごいよ!!!!
こんなにつらかったものが、まだいい方なんて…すさまじいです。
その後病室に戻り、落ち着いたところで赤ちゃんがやってきました。
体をきれいに拭いてもらった娘はすやすや眠っていました。
その安らかな顔を見ると、自然と笑みがこぼれます。
一緒に来てくれた先生と破水した状況を振り返っていると、
「この子親孝行だね。多分お母さんが苦しそうにしてるのを見て、早く出てきてあげようと思って破水したんかもね。その後も出てくるの早かったし、優しい子になるよ。」
と言ってくれました。
そうか、この子も一緒だったんだな。
私は陣痛が始まってから、孤独に戦っていると思っていましたが、本当は一緒に頑張ってくれていたんです。
お腹の中で全部聞いていたんだね、助けてくれたんだね。
出産はつらく大変なことですが、子どもとの初めての共同作業なんだと気づきました。
これからこの子と、一緒に生きていくんだな…
期待と不安が入り交じったような気持ちに包まれました。
おわりに
これで、長い長い妊娠・出産編は終わりです。
お付き合いいただきありがとうございました。
大変なことが多くて、とてもいい思い出だったとは言えないのですが、娘に会えた事はこの全てをひっくり返すくらい幸せなことです。
ですが、これで終わりではありません。
むしろここからが本番です。
次からは育児編突入です。
さっそく私はこの次の日から、子育ての大変さを思い知ることになります。
次回もお楽しみに!