⑩出産したら母になれると思ってました ~入院期間の終わり~
前回の続きです。
入院生活に暗雲が立ちこめます。
母親とは
泣いている娘を泣き止ませることも出来ず、下手な抱き方で夜中中歩き回って、朝にはくたくたになっていました。
娘は疲れて寝てしまいましたが、しばらく時間が空くとお腹がすいて再び泣き出しました。
いつものようにナースコールでミルクを頼むと、看護師さんが来てくれました。
「昨日はすごく泣いたんですけど、私の抱っこだと泣き止まなくて…」
「そうだったの。一回赤ちゃんかしてくれる?」
看護師さんが抱くと、スッと大人しくなる娘。
どことなく安心感がある顔をしています。
母親は私なのに
満足に抱っこもしてやれない。
「私たちは色んな赤ちゃんを抱っこしてるから、慣れてるのよ~。そのうちしっくりくるようになってくるから大丈夫よ」
そう言われましたが、そのアバウトな励ましは逆に私にとってはつらかったです。
私の中には真っ黒の感情が生まれるように…
それからはなぜか弱音を吐くのも気が引けてしまい、1人で抱え込むようになりました。
泣き止まない娘。
私はこの子の母親。
母親?
私はついこの間まで「私」だった。
でも今は「母親」。
私はこの子を産んだ。
でも産んだだけ。
それ以外は何も変わっていない。
でも周りは待ってくれない。
産んだ瞬間から「母親」としての責任が全てのしかかる。
その覚悟がなかったのか?
そう言われたら返す言葉もない。
でも、この行き場のない不安はどうしたらいいんだろう。
涙が止まらないまま、ひたすら娘を抱っこしていました。
そしてその後
とにかく不屈の精神で娘に向き合っていました。
少しずつ母乳が出たり、抱き方がわかってはきましたが、まだ自分に自信が持てませんでした。
ただ、この環境にいることがとても窮屈で、とにかく早く家に帰りたかった。
周りに病院の先生たちがいることで、頼りになるというよりプレッシャーになっていたんです。
私がもっと気楽に頼れば良かったのかもしれない。
でもあのときの私は余裕がなかったんです。
そして、ついに退院の日になりました。
やっと家に帰れる。
このときはその気持ちが一番大きかったです。
この環境から離れれば、状況が少しは良くなるんじゃないか。
そんな淡い希望を抱いていたんです。
寝られない生活、戻らない体調、体の痛み、孤独感、これらとの共同生活の始まりです。
次回に続きます。
おわりに
これは私の体験談なので、みんながこうではありません。
入院期間も楽しく終えられた人もたくさんいると思います。
ただ、私は本当につらい数日間でした。
娘のことは本当に可愛くて、永遠にながめていられるくらいでした。
幸せと感じる時間ももちろんありました。
でもそれは母親としての気持ちというよりも、単に赤ちゃんを見て可愛いと思う感情に近かったかもしれません。
まだまだ実感がわいていなかったというのが本音です。
この私も今は母としての自覚をもって娘を愛すことが出来るところまで成長できました。
もし同じ思いをした方がいて、その方の励みになれば幸いです。